最後の輝き

めんどくさがりな人が好きなことを書くための日記です。

『失敗の本質』を読んで〜ミッドウェー海戦〜

『失敗の本質』を読んだ。巷で有名なこの本は、太平洋戦争の6つの戦いから失敗の事例を紹介し、分析を行っている。今回取り上げるのは、開戦以来勝ち続けてきた日本海軍が1942年6月に初めて完敗したミッドウェー海戦

終わってみれば、当時世界最強と言われた南雲機動部隊は正規空母4隻を失い、米国海軍に完敗。数ヶ月後の南太平洋海戦には辛くも日本側が勝利するも、このミッドウェー海戦での敗退が太平洋戦争の日米の攻守の転換点となっている。本書の中で敗れた原因がいくつか述べられているがこの海戦で自分が特に重要と感じた点は以下のとおり。

1.作戦目的の2重性と、指示の不徹底

そもそも、日本海軍にとって、ミッドウェー海戦の目的はミッドウェー島を攻略することで米空母を誘い出し、これを撃滅することであった。真の目的は米空母を叩くことであるにも関わらず、現場の部隊に作戦の指示を徹底しなかったことでミッドウェー島を攻略することこそが主目的のようになってしまった。

対する米国海軍の司令官ニミッツは「空母以外には手を出すな」と厳命。米海軍の目的はただ一つ、日本の空母機動部隊を叩くことに集中していた。

日本の機動部隊は島の攻略と米空母の撃滅という2つの目標に対しての戦いを強いられることになり、対応が中途半端になってしまった。

2.戦力の分散

米海軍は1ヶ月前の珊瑚海海戦で被弾し傷ついた空母ヨークタウンをわずか3日間の応急修理で出撃させる。

対する日本海軍は搭乗員や航空機の補充の問題があったために珊瑚海海戦で無傷だった正規空母、瑞鶴を投入できなかった。さらにはアリューシャン攻略作戦も合わせて行われたため、空母2隻を分散させることになり、戦力的には圧倒的有利であったにも関わらず、その戦力を集中して運用させることに失敗してしまう。

3.情報の軽視と索敵の失敗

日本海軍は海戦前に第六艦隊司令部の無線探知により、米空母出撃の確証をつかんでいた。さらに海戦前夜、空母飛龍の敵信傍受班と旗艦大和の傍受班が米空母らしき電波の傍受に成功していた。しかしながらこの貴重すぎる情報は連戦連勝による驕りと油断によって軽視され、あるいは黙殺され現場に共有されることなくその後の悲劇につながる。

これらの情報の軽視により、現場の機動部隊は海戦当日朝、「本日敵出撃の算なし」という油断しきった判断をすることになる。

一方の米国は暗号解読により日本海軍の狙い、戦力を把握することで、ミッドウェー島に増援を送り、損傷した空母ヨークタウンの修理を急ぎ戦線に参加させ、迎撃の準備を整えることができました。

 

教訓

1.正しい目標を設定し、戦力の集中をする

金や時間などのリソースを、最も重要な1つの目標のために集中させる。
ただし選択が重要。活躍の場もないのにもないのに大枚をはたいて時代遅れの戦艦大和を作ることになる。
大和や武蔵ではなく、防空システムやレーダー、暗号の解読といった新しい技術を積極的に取り入れることが必要。

2.情報収集の徹底と選別

佐藤優さんと手島龍一さんの本にありましたが、ウサギに必要な武器は鋭い爪や牙ではなく、長い耳。危険を未然に察知して対策を練ることが重要。普段からアンテナを広げておく。その際は自分にとって都合のいい情報ばかり集めず、ゼロベースで考える。

 

■参考文献

ミッドウェー海戦』森史朗著 新潮選書